エグチーセット

Open App

友達の友達と帰ることになった。
本当なら友達と帰る予定だった。だが具合がわるく友達も帰れそうに無い。そこへ代役として彼が抜擢されたのだ。
そう、彼からしたら面倒を押し付けられたも同然だ。なにより、私は人見知りが強い。正直、一人で帰りたい。
いい人なのだ。
それはわかってる。
今だって私の体調を気にかけてくれている。
だが体調不良によるマイナス思考と人見知りが噛み合い苦痛だった。
やだな。友達と帰りたかった。そして、こんな優しい人に嫌な感情を抱く私。もう全部嫌。
歯を噛み締め泣かないように必死だ。
そんなんだから階段を踏み外す。
こんなこと考えてるからバチが当たったんだ。
せめて痛くありませんように。など考えながら目をきつく閉じる。
だがそれより何かにきつく抱きつかれていた。
上を見上げると、必死な顔した彼がいた。
「平気?!立てる?」
小さくうなづく私にホッとしている。だがつぎに泣き出した私にまた慌てふためく。どこか痛いのか。腕痛かったのかと矢継ぎ早にきかれポカンとしてしまった。
「あ、安心したら泣いちゃった」
恥ずかしいな。そうへらりと笑う。
今度は彼の方が苦しそうに顔を顰め私はギョッとすることに。
どうしたんだろう。
ゆっくりと体勢を立て直し邪魔にならないよう移動する。私がずり落ちたことでざわついていた人の流れがすっかり元通りになった。
「……本当は、もっと余裕ある風に送ってくつもりだったんだ」
「十分だよ。ありがとう」
「どうせなら、カッコいいとか意識されたかったんだ」
階段から落ちかけてドキドキして、助けられてドキドキして。このドキドキはどうやって落ち着けたらいいのだろう。

10/25/2023, 4:23:31 PM