「私ね、今どうしても欲しいものがあるの」
ぼくの彼女がそう言う。少し微笑みながら、ぼくは聞いた。
「なんだい?それは」
「ふふふ、私が今一番欲しい物はね…」
こういう時、こう返ってくるだろうに違いない…
"あなたのことよ"
ああ、かわいいな。
ちょっと赤くなりながら、はずかしそうに笑って言う姿が容易に想像できる。
途端、視界が転落する。
「あなたのイノチよ」
さいごに聞こえたのは、興奮した微笑みに満ちて言い放った、彼女のこの言葉だった。
ぼくは意識を失った。
「私、実は始末屋なの。今一番欲しい物はあなたのイノチだったから、もらっちゃった。
…あ、もう聞こえてないよね、ごめんね?」
_2023.7.21「今一番欲しい物」
「約束通りやったわよ、藤井君」
「ありがとね。…さて、次は……」
7/21/2023, 12:18:26 PM