“こんな夢を見た”
夏が終わる。
最後の足掻きのようにけたたましく鳴く蝉に耳を傾けながら、俺はぼうっとした顔で溶けかけのアイスを齧った。
「今年は暑かったな」
まるで今年の方が去年より暑かったかのように言ってみる。
この国は年々と暑さを増しているそうだ。とはいえ、夏休み中は外出することが少なかったためあまり気にしないでいた。
「夏が終わるよ。寂しくないの?○○は」
昔は夏が嫌いだった。蝉の声もうるさいし、暑いし。
でも最近では、蝉やひぐらしの鳴く声が好きになってきたり、暑くてもクーラーをつければ丁度いい気温になるから夏は嫌いではない。
「そりゃあ、ね。でも来年も、再来年も来るでしょ?」
ぱたぱたと扇子を扇ぐ音と共に君の涼しそうな声が聞こえてきた。君は、俺の心を知っているのだろうか。
最後の一口を食べようとしたが、もう既にアイスは溶けてしまっていた。
そこで目が覚めた。
時計を見ると、まだ針は5時15分を指している。
なんだ、早起きしちゃったな。そう思いながらふと窓の外へと目を移す。
桜の花がひらり、舞い落ちてきた。
そうだ、君はもう居ないんだっけか。
去年の夏。運悪く交通事故に遭い亡くなってしまった君との最期の会話を思い出す。
1/23/2023, 10:50:40 AM