同じの団地に2コ下の女の子がいた。
その子がまだ小学校上がってなかった頃の話。
団地の前の道路でしゃがみこんでいた彼女は
階段を降りて外に出てきた私に急に近づいてきて
「蟻捕まえること出来る?」と聞いてきた。
どんくさい私にワラワラ動く生き物を捕まえる自信はなく
出来ないと答えると
「私は出来るよ」と嬉しそうに笑った。
見ててと言うので仕方なく、と言うか正直悔しかったので
本当に捕まえられるのか見ていることにした。
ほどなく蟻を見つけた彼女は
「見てて!見てて!」
と大声で叫ぶ。見てるよと近づいた私に笑顔を向けた彼女は
おもむろに蟻に向かって手を振り下ろした。
バン!ぷちっ──
潰れた蟻をつまみ上げ、彼女は嬉しそうに笑った。
勝手に生け捕りと思っていた私は数秒凍りついたが
澄んだ瞳でこちらを伺う彼女に向かって
何とか持ち直し「スゴいね」と笑顔を返した。
(澄んだ瞳)
7/31/2024, 7:29:02 AM