私は夏休みに入ると唯一の外に出る理由、学校が無くなる。
しかし汗は定期的に流せと妹に言われてしまったので
散歩くらいはしようと思う。
だがいかんせん夏。暑い。
こんなじめじめした夏にはあの人を思いうかべる。
私の初恋を奪った人を。
汗で額に張り付いた前髪をはらいのける手からふわりとほのかに香る金木犀の練り香水。
あの人とは高校の先輩で、同じ部で仲良くなった。
気が合って定期的に一緒に遊んでいた。
あの人は私のことを気が合う友達だと思っていたかもしれない。
しかし私はあの人に『好き』という感情を抱いていた。
この気持ちを留めておくのは辛かった。
でもこの気持ちを伝えてこの関係が崩壊する可能性があり、怖かった
あの人と同じ大学には行けなかったので、自然に疎遠になってしまった。
同性だからと怯えず、断られること前提で告白すれば良かった、と今更後悔しても、、、。
額から汗を流しながら思いにふける。
そのせいで前から来た人に気づかなかった。
金木犀の香りだ。
8/30/2024, 3:24:45 PM