金木犀の花びら

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         4,飛べない翼

    昔わたしは、飛べない翼を持っていた。
せめてなかったらよかったと何度思ったことだろう。

翼とは、自身をどこまでも高く飛ばせ、どこまでも行ける自由の象徴であると言えるだろう。
 
    けれど、わたしのこの翼は違った。

ただのお飾りであり、そのうえ、その翼は妙に大きく、わたしの細身な背中についていて、なんの利益もわたしに与えることのない、邪魔な存在だった。

 わたしは昔、その翼をとろうとしたことがあった。

   けれど、とることは物理的に困難だった。
その翼はいわばわたしの個性。もっともわたしの嫌いな部分だったのだ。

だがある日、わたしはその翼を飛べることのできる翼にすることに成功した。なに、別にそういう手術をしたわけではない。

ただ、飼い慣らすことに成功した、とでもいうのだろうか。

わたしは、わたしの嫌いだった個性は、わたしの最も最高の長所となり、味方となることを知ったのだ。

2023.11.11

11/11/2023, 1:02:06 PM