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「うー、寒い」
 びゅうと吹き抜けた風の冷たさに思わず身を縮めた。
 冬の気配を運んできた風は、枯れた落ち葉とともに街の景色から秋を連れ去っていく。
「寒いね」
 隣を歩く彼女のほっぺたは寒さで赤く染まっている。
「寒いとさ、あれ食べたくなるよね」
 そう言って彼女が見つめるのはコンビニの明かり。彼女に手を引かれて、その手の温もりに誘われるままコンビニに入った。
「肉まんひとつください」
「ひとつでいいの?」
「うん。あんまり食べると夜ご飯食べられなくなっちゃうから。半分こしよ?」
 そう言って、彼女は買った肉まんを半分に割る。湯気が白く見えるようなほかほかの肉まん。はい、と差し出されたそれを受け取って二人歩きながら食べる。
「おいしいね」
「うん」
 肉まんを頬張って笑う彼女は見ているだけでぽかぽかする。
「早く帰ろう」
 冬の色を纏い始めた街の中、繋いだ手から二人の体温を分け合いながら少しだけゆっくり歩いた。

【木枯らし】二人で身を寄せ合う帰り道

1/18/2023, 8:35:44 AM