彼女を起こさぬよう、そっとベッドを抜け出す。
軽く身支度を整え、キッチンに向かう。
なるべく音を立てないように、慎重に調理開始だ。
サラダやスープをこしらえたら、いよいよメインの玉子焼きにとりかかる。彼女の好きなふっくらふわふわの甘い玉子焼きだ。
砂糖と少しのみりんをよく溶く。焦げやすいから手早さと集中力が必要だ。火加減にも気をくばり、少しずつ焼いては寄せて卵液を足す。
菜箸に伝わるふわっとした手応えに、昨夜の彼女のふくよかで柔らかい体を思い出す。
「んー、いい匂い。おはよう。」
甘い香りに気づいた彼女が起きてきて、僕の背中に抱きついてきた。
あぁ、今日も彼女の目が覚める前までに作り終えることができなかった。
僕としては「朝ご飯できたよ。起きて?」って、眠る彼女の頬にキスをして起こすのが夢なんだけど。いつも玉子焼きの香りがそれを阻止するんだ。
ま、いっか。
起き抜けの彼女も、可愛いことに変わりないし。僕は体の向きを変え、彼女におはようのキスをする。
あ、しまった!
玉子焼き、ちょっと焦げちゃった。
お題「目が覚めるまでに」
8/3/2024, 11:38:43 PM