アパー・キャットワンチャイ

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『愛情一本、シオビタドリンク』
テレビから流れるCMの音をBGMに皿洗いに勤しむ。
手を動かしながらも、思考が手持ち無沙汰になり、
(愛情か...結婚してから数年はあったかな...)
などと考えていると、2階から
「ママー、お風呂入っていい?」
と次男が問う声が聞こえた。
「いいよ」と答えるとドタバタと階段を降りてくる音がする。
リビングからは缶のレモンサワーをゴクゴクと、喉を鳴らしながら飲む音が聞こえる。耳が真っ赤だ。
(弱いくせに良く飲むわ)
「この芸人さ、よくドラマにもでてきれるんだけど、芸人のイメージ強すぎて役が入ってこらいよね」
呂律が回っていない。
生返事をしながら、皿洗いを続ける。
皿洗いが終わってリビングへ行くと夫はドラマに飽きたようで、寝そべりながらスマホをいじっていた。
ドラマは途中から見たが、案外面白く すっと見入ってしまった。
CM中に話しかけると夫は寝息を立てて眠っていた。夫のスマホは、なにやらショッピングサイトで花のアクセサリーや雑貨を見ていた様子だ。
(そうだわ...そろそろ結婚記念日...私は正直忘れてたのに、律儀に覚えているのね、適当に見えて真剣だから、そういうところが好きなのよね)
と考えたところで、気付いた。
(愛情はすぐ近くに隠れてたのね)
「愛してるわ」
と小声で耳打ちをした。
「んんっ」照れ顔を隠すように寝返りを打ったのは気のせいだろうか。

11/27/2023, 12:20:07 PM