しとしと、と雨があたしの肩を濡らす。突然に降り始めた雨に憂鬱になりかけたがあたしに降り注ぐ雨は柔く、温もりさえ感じた。なだらかな坂をくだり、高架下にもぐりこむ。いつものように雨が止むのを待つことにした。さあっと流れていく雨は遠く、現実味を帯びていない。雨音に混じりずっと耳鳴りがしていて、それはひぐらしの鳴き声に、少し似ていた。細かな雨がまるで宝石のように柔らかに落ちていった。
11/6/2023, 12:25:09 PM