イオリ

Open App

ジャングルジム

買ったばかりのたい焼きを、公園のベンチで、ふたり並んで食べ始めた。園内では、近所の子どもたちが遊具で遊んでいる。


あれ?

なに?どうしたの?

いや、ジャングルジムってあんなに低かったっけ?うちの小学校のはもっと高かったような気がする。

そう言われれば。あれじゃない?落ちて事故が起きたら、市の責任が〜、ていうので低いのにしてあるとか。

ああ、なるほど。

よく遊んだ?ジャングルジム。

まあ、人並みに。でも。

でも?

一番上まで登ったことはなかったと思う。

どうして?怖かったの?

まあ、それもあるけど。たぶん、そういうのは興味なかったんだと思う。

そういうのって?

一番上に登るとか、一緒に遊ぶ子よりも早く登るとか。

じゃあどうやって遊んでたの?

確か……。仰向けで真っ直ぐ横に進んだ記憶がある。

なにそれ? 彼女が笑って言った。

そんな子いる?

いるさ、日本の何処かには。僕の周りにはいなかったけど。

何やってるの?って友だちに言われなかった?

言われた。でもやめなかった。それがいいって思ってたんだ。要するに、普通のが嫌だったんだ。みんなと同じのが。自分しかやらないやり方が楽しかったんだと思う。

彼女は、ニッコリ笑った。

あなたって、子供の頃から、あなたなのね。

なにそれ、成長してないってこと?もう子どもじゃないぞ。

そうじゃなくて。

まあ、いいけど。そうだ、せっかくだから、どんなふうにやったか見せてあげようか。

僕は、立ち上がって子供たちのいるジャングルジムに向かおうとした。瞬発的に彼女が僕の腕を掴む。

おやめなさい。たい焼き、もう1個買ってあげるから。

も、もう子どもじゃないぞ。

ハイ、ハイ。


9/23/2024, 12:18:51 PM