NoName

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いつも夜が嫌いだった。
賑やかで、どこから聞こえてくるのかも分からない街の喧騒が好きで。
そんな大好きな街が、夜には静まり返ってしまう。
どこか、知らない場所に捨てられたみたいに不安になる。
怖くて怖くてたまらなくて、ぬいぐるみを握りしめながら目を瞑って寝る。
涙目になりながら明日の朝にはまた戻れると考える。
それでもどうしても眠れない日があった。
いつもは暗いはずの部屋に、薄い光がカーテン越しに覗いていた。
それを見ると、涙も引っ込んでしまう。
ぬいぐるみを枕に寝かせ、そろりとベッドから抜け出す。
ぎしりと音を立てるベッドにビクつきながら、そっとカーテンを開ける。
息も出来なかった。
子供の頃の俺にとっては、衝撃的なものだった。
きらきらと輝いている星が形も色も鮮やかに、そして鮮明に空に浮かんでいる。
どす黒かった空も青みがかかり、見事な色を響かせている。
太陽が寝ていても、星は照らしてくれる。
吸い込まれそうな夜に恋をしてしまったように。
俺は、夜が嫌いだ。

7/5/2024, 12:49:23 PM