ごみぶくろ

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燦然と輝く光の塊が目の前を走り去った。
正確には走り去ったのは僕達の方だけれど。
一枚の窓を隔てたそれは少しぼやけて、そして瞬く間に消えていった。

イルミネーションに心を震わせなくなったのはいつからだろうか。
大きなツリーを前にして一緒に笑ったあの子がいなくなってからかもしれない。
何ともなしに外を眺めていると窓越しに隣の男と目が合った。

「ねぇ、今の見た?」
「今の?なんのことですか?」
「イルミネーション。運転席からは見えなかった?」
「いえ、見えました。あなたがお好きなら戻りましょうか?」
「お前は好きじゃないの?」
「おれが好きなのはたったひとつだけってあなたも知っているでしょう?」
「…そうだね」

言外に含まれたI love youに少しだけむず痒くなる。
まさしく僕以外に興味のないこの男にとってはイルミネーションだってどうでもいい風景のひとつにすぎないんだろう。
どんどんとつまらないものが増えていく僕と比べてもこの男は『どうでもいいもの』が多すぎる。
それでも、たったひとつを大切に抱えて幸せそうに笑う姿を見ているとそれでもいいのかもしれないな、なんて思ってしまう。
つまらないものもどうでもいいものも溢れすぎているこの世界で大切なものだけを愛し続ける。
それってとても幸せなことなのかもしれない。

イルミネーション

12/14/2024, 6:05:04 PM