おまえの死体

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今日も嫌な時間がやってきました。

眠剤を飲んで効くまでの20分。静かで暗い部屋でこうもスマホを見つめているとたまに何をしているのか分からなくなる。そうなると息の仕方を忘れてしまう。今日もだ。眠剤を飲んでる時に外に出るのは良くないと分かりつつも、このままだと闇に飲み込まれてしまいそうで闇雲に外を走った。小学校の時にお母さんに怒られるといつも来ていた川にたどり着いた。もう3月とはいえ深夜になると冬真っ只中と変わらないくらい気温は低く口から出る息は白かった。
とにかく時間が無いと思いっきり鼻から息を吸った。
吸った空気は数年前と変わらず、冬のツンとした冷たくて何処か寂しい空気の匂いがしてなんだか少し落ち着いた。


仕事が終わって、ふとこのアプリを開くと今日のお題は
たまには
で、ああ、今日くらいは休んでも良かったかもな。なんて思ってしまった。勿論頂いたお金を見るとそんな気持ちは一気に吹き飛ばされていき、
たまには
なんて言葉に惑わされず今日も出勤してよかったと思う


自身を切り売りする仕事には寿命があって、ヒシヒシと近づいてるのはすごく実感している。
ただ、所謂汚い日陰の仕事をできる。自分の顔やスタイル。接客術をフルに使える仕事なんてこの位しかないよな。と思う時もあります。

「こんな仕事好きじゃない!」

なんて言えたら楽なんでしょうね。
ですが人間には理性と本能があって、源氏名ちゃんの事が好きなんだ。君にはこんな仕事やめて欲しいと本当に思ってる、なんて薄っぺらい言葉をかけて来る本指名の男もシャワーが終わりベッドに入ると理性がかけ離れて本能で接してくる。
私はとことん人間が好きです。
私を楽にしたいなら何をしたらいいのかなんて理解してるはずなのにも関わらずそれをせず店を通して金というフィルターを通して、90分を過ごすこの時間は何気に心地いい。薄汚れた天井を見上げて演技をして、不愉快に思うこともあるが、理性と本能がかけ離れていく瞬間を間近で見れる仕事なんか中々なくて、その瞬間を見ると「生」をものすごく感じてなんだか笑えてくる。この笑みはきっと蔑んだ笑みなのだろうけど。


毎日毎日、今日は休んじゃおうかな、。なんて考えながら準備をして出勤をしている。
そんな汚い仕事……とか。
裏社会じゃん。とか。
所謂私がしているのは日陰の仕事なのであろう。
でも君たちのような日に当たってる仕事があるおかげで、私みたいな夜でしか生きれない、そう。「日陰」が存在してるんだ。


元彼は言っていた。
金木犀ってすごくいい香りがするんだよ。


私は今誰かの特別な存在になれていない。
仕事終わりに雑に唇を拭った時に感じた風。我に戻って涙を堪えた帰り道はあの時に吹いた風が知ってくれている。

金木犀の香りは未だに知らずにいるが、私だけが知っている私の孤独を憎悪を少し落ち着かせてくれる風の匂いは今でも忘れない。

3/5/2024, 5:48:42 PM