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初恋の日

あの日も何時もの様に窓から景色を見つめていた。私は7歳の誕生日を目前に難病になってしまってからずっと外に出る事は出来なくってそれが私の全てとなった。暇で暇で何も刺激のないそんな生活が日常と化していた。見向きもしなくなった父や弟、陰口を叩いたり憐れんでくる使用人。もう笑える様な出来事なんて二度と来ないと思っていたのに。
この日は曇り空で少し強い風が吹いていたからあまり人は見えなかった。日常と化したといっても暇である事も事実なので何となく少し暗くなってから外へ出た。皆んな私に興味がなかった様で簡単だった。
その足で向かったのはずっと行きたかった原っぱ。近くには森もあるが入らなければ安全だし、何よりも落ち着く。もう夜なのだからこんな外れには誰も居ないと思っていたのにそこには先客がいた。それも私と同じ位の子で。気がついたらしく此方に手を振って話しかけてきた。その子とはよく話があって同年代という事もありすぐに仲良くなった。
時間が過ぎるのは早くもう直ぐ帰った方が良いであろう時刻になっていた。そこで私はその子と当時は何より重く、神聖な物だと真剣に思っていたその誓いを交わした。子供によくあるやつだ。
「また明日もその後もここに集まろう。二人ならどんなに辛い事があっても乗り越えられる筈だから。二人だけの秘密だよ」
それを交わしてから帰ったもののその後誓いは守れなくなってしまった。私の足は動かなくなったのだ。あれから数年が経ったが、今でもあの子の事を思い出す。元気にしているだろうか。
それにしても今思えばあの温かな初めての気持ち、あれは初恋というやつだったのだろうか。今日は私がこの気持ちを知れた記念日。秘密の誰にも汚されることのない初恋の日だ。
例え会えなくともあの子も同じであることを願う。

5/7/2026, 4:42:41 PM