朝学校に行くと、ある女の子が泣いていた。
それに気づいた時には、ほかのクラスメイトが一斉にこっちを見た。
泣いた理由を聞くと思わず手が震えた。
最初誰かが、
[志那のせいなのに何とぼけてるの?]
と言った。
私は何もしていない。
泣いている子は学校でも関わることの無い人だし、放課後は一度も外に出ていない。
その事を必死に言ったが、誰一人として信じてくれなかった。
泣いている子は少し顔を上げてゆっくりと泣いた理由を話し始めた。
[志那ちゃんが私の物を隠すの...。この間は消しゴムがなかったし、昨日は志那ちゃんが通った後に置いてあったノートが無くなったの。]
その子は男女問わず元々人気な子だった。
だから余計にこの子の味方しかいなかった。
そう思った瞬間、その言葉を聞いた一人の子がこう言った。
[あなたが見たのは"本当の"志那さんじゃない。]
と。
その言葉を聞いたクラスメイトは一斉にその子へ目線を向けた。
<本当のって何?>
そんな声も聞こえた。
その言葉を言ったのは祐奈という子。
決してお世辞でもクラスで目立っているとは言えない子。
私ともほとんど話したことは無い。
驚くクラスメイトを遮るように話を続けた。
[美紗さん。あなたが見たのは志那さん本人では無い。志那さんの"ドッペルゲンガー"。]
いきなり都市伝説な様な言葉を聞いて少しびっくりした。
その言葉を聞いた美紗は話を遮るように、
[じゃあ私が幻を見たって言うの?明らかに志那ちゃんだった!!]
と言った。だけど祐奈は、
[ドッペルゲンガーはその人にそっくりな生き物のことを言うの。3人か2人に本人が出会うと死ぬと言われている。それがドッペルゲンガー。]
出会うと死ぬ...。その言葉を聞いて背筋が凍った。
会ったのは私では無い。
だけど、見たというのなら会う確率が無いわけでは無い。
みんなが怖がっている中私の方を見て、祐奈は、
[でもね。ここにいる志那さんは本物じゃない。]
と理解不能なことを言った。私はすかさず、
[私は偽物なんかじゃない!!]
と言った。だが祐奈は
[偽物。だって志那さんはこの間引っ越したばかりでしょう?ドッペルゲンガーじゃないならなぜここの学校に未だにいるの?]
と言った。
[でも、確かにいつもの志那ちゃんと口調が違う...。]
と美紗が言う。
あ、つい中身が出ちゃった。もういいや。
[そうだよ私は
"ドッペルゲンガー"]
美紗が泣いた理由も私なんだよ。
【泣いた理由】8 kogi
10/10/2023, 10:49:40 AM