男友達と帰る、夏休み前。
君は自転車を引いて、僕は歩いて。
「あっつ」
短縮授業で照り返す太陽が強くなった正午過ぎ。
「こんなんだと八月どうにかなるだろ」
「だよな」
最近ずっと暑くないか?
そんな他愛のない話。
後ろから僕ら二人を呼ぶ女友達の声がした。
「うぇーい」
自転車に乗ったまま彼にちょっかいをかける。
「なんだよ」
「なんとなく」
適当にあしらう彼と頬を膨らませる彼女。
彼女が僕の名前を呼んだ。自転車から降りる。
「うぇーい」
彼と同じように、いや僕には少し強く抱きついた気がした。
「離れて、あっつい」
「えー」
さっきと同じようなやり取り。
思わず笑みが溢れた。
「あ、笑ってる」
僕だって笑うから。
ふと気になったことを二人に尋ねた。
「男女の友情って成立すると思う?」
「急に何?」
「彼女が聞いてきたから」
蝉時雨の中、二人が答える。
「しないだろ」
「するでしょ」
何で?とそれぞれに聞いた。彼が答える。
「だってずっと一緒にいたら好きにならねぇ?」
「ならない」
はっきり言ったな。
「私、二人に好きとかないから」
君はほんとにはっきり言うな。
「でもよく絡んでくるじゃん」
「あれは仲良いし、信頼してるから」
「好きじゃなくて?」
「違う」
きっぱりと断る。
「あっそ」
よくわかんねぇ。
とりあえずコンビニで涼むか。
「アイスでも買ってこ」
7/24/2023, 12:15:01 PM