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まだらの空模様。
茶色と生成り色を交互に混ぜ合わせた、チョコレートミルクの色だ。
けれども脳内の食欲センサーはうんともすんとも鳴らない。
せめてお腹が空いてくれればいいのに、なんて。
冷たい土の上に横たわった僕は、そんな風に呆けながら空を見ていた。
「チョコレートってどんな味がするんだろう」
消え入りそうな声で隣の君がそう呟いたので、僕たちは同じことを考えていたのだということを知る。
「食べてみたいかい?」
「まあね……どうせ死ぬなら」
僕たちのどてっ腹の横から流れ出すオイルが混ざり合って、ああ、こちらはチョコレートコーヒーかな。
こんな状態になったと言うのに、人間のつくったそれらに惹かれてしまうのも、僕たちの悲しき習性というものか。
「どうやら甘いらしい」
「甘いってどんな味なんだい」
「さあ」
戦争は、明日にも終わるだろう。
僕たちのような用済みのロボットも、血まみれで倒れる用済みの人間たちも、すべて消滅する。
この茶色い空がその合図だった。
生まれてから死ぬまで、僕たちは戦ってきた。
生まれてから死ぬまで、僕は隣の君と一緒だった。
君の指が土の上のチョコレートコーヒーをすくう。
混ざり合ったそれは君の口の中に消えていく。
「苦いや」
ずっと君と一緒だったのに。君が甘党だということを僕は初めて知ったよ。

8/19/2023, 6:26:12 PM