『 手を繋いで 』
――寒々とした冬空の下、両手で缶コーヒーを握って暖を取り、寒さで頬を赤らめる貴方の横顔に目を奪われた。長い睫毛、鋭く高い鼻、リップクリームで潤った唇、どこか色気のある貴方の表情に心臓が高鳴る。
「...なんだヨ、オレの顔にゴミでも付いてるショ?」
一瞬横目で見たつもりが、長い間眺めていたらしい。
困ったように眉を下げて話しかけてくる貴方とバッチリ目が合い、少しの間沈黙が生まれた。
「い、いやなんでもない!気にしないでくれ、巻ちゃん!」
沈黙を繕うように慌てて返事をする。いつもだったら話しかけられただけで動揺することなどない。
先々週――
『巻ちゃん、好きだ。付き合ってくれ。』
『......遅せェヨ。その言葉、ずっと待ってたショ。』
艶のあるよく手入れされた鮮やかな玉虫色の髪の向こう側には、白く透き通るような肌と対に赤く染まる頬が覗く。やけに輝かしく光る星空の下、冬の峠の頂上で長年募らせていた想いを告げた。
――それから恋人同士となったが互いに忙しく、今日久々に会うことができた。それが偶然イルミネーションの点灯開始日だったらしく、見に行こうと急遽予定が決まった。
“ イルミネーションデート ”という恋人らしいことに妙に緊張し、どう接していいのかわからなくなる。
「なんかお前...、今日おかしいショ。なんかあったか?」
「べっ、別に何もないぞ!!いつも通りだ!!」
自分の緊張を指摘され、心の内に小さな波が立つ。
「そうかヨ。...時間だな、行くか。」
どこのブランドか検討もつかない奇抜な柄の腕時計をちらっと見てはこちらに目線をやり口を開く。二人で短い冬道を歩きながら天を仰ぎ、
(本当に俺たちは付き合っているんだな)
なんて考えていると次第に顔が熱くなる。赤くなる顔を悟られないよう、寒さのせいだと自分に言い聞かせ続けた。悴む手をさすりながら白い息を吐く、特にこれといった会話もできないまま目的地に到着してしまった。点灯前の装飾ライト近くのベンチにゆっくりと腰をかける。
「...20秒。」
無言のままだった貴方が突然口を開く。何のことか理解できなかった俺は、きょとんとした顔のまま隣に座る貴方の顔を覗いた。俺に視線を送られようともこちらに見向きもせず、目の前の装飾ライトだけをじっと見詰めていた。
「15.........10...、お前もちゃんと見とけショ。」
男性らしい鋭利な横顔といつもよりワントーン落ち着いた声で話す貴方にどきりと動悸が弾む。言われたとおり、じっと前だけを見詰めては謎の緊張感に息を飲む。
「5、4、3、2、1......0」
貴方のカウントダウンと共に、ネオンライト
12/10/2022, 8:23:44 AM