陶子

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【不条理】

兄が亡くなった時、「本当にこの世は不条理だ」と強く強く実感した。

当時の兄は二十歳になったばかりで、大きな企業に就職しており、友人も多く、可愛い彼女もいた。
そして何より、歳の離れた妹である私をとてもかわいがってくれていた。
本好きの私のために、よく車で本屋に連れて行ってくれた。
(兄の愛車であった真っ赤なスポーツカーは、いつもピカピカに磨かれていてとてもカッコよかった。)

かたや私ときたら、ブスで陰気で愛想が悪く内弁慶、体育がてんでダメでいじめられっ子だった。

どちらが世界に必要な人材か、考えるまでもなかった。私が死にたかった。

「善人は神様から早く呼ばれてしまう」的なことを聞かされた際は、「神様はバカだ」と心の中で悪態をついた。

兄が生きていれば今頃は、可愛い奥さんと子どもに恵まれて幸せに暮らしていただろう。
私は二十歳をとっくに過ぎて、結婚はしたが心身ともに弱く、三回も入院・手術をしており、子どもは望めない。仕事も無理だろう。


私が地球で生きていても無駄な気がする。
やはり兄が生きているべきだった。
本当に神様はバカだ。

3/18/2024, 2:04:23 PM