「星が綺麗だね」
僕の左隣、君がイタズラに微笑む。
「そっ、」
そうだねと返しかけたが、ふと思い出した。
いつか君が教えてくれた言葉。
“月が綺麗ですね”は愛してる。
“星が綺麗ですね”は……
「それはどっちの……?」
意味を深読みするには満天の星空だったから、思わず問いかける。
彼女は一瞬目を点にしたあと、すぐにまたイタズラな笑みを浮かべた。
「さあ、どっちでしょう?」
何だか揶揄われているようで少し悔しくて。
「……月も綺麗だよ」
そっと彼女の右手に自分の左手を重ねる。
繋いだ手が溶けそうなほど熱かった。
「貴方と見る月だからかな」
そう言って満天の星空の下で笑う君は月よりも綺麗だった。
4/6/2023, 2:31:00 AM