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遠い日の記憶

 無償の愛を教えてくれたのは、リリーだった。
 あの日学校から帰ると、リビングの真ん中にリリーは横たわっていた。新聞紙と毛布の上で。父と母はそばに座り黙っていた。私は恐る恐る手を伸ばした。暖かい。私を見たリリーは、震えながら立ち上がり私の足に手を乗せて穏やかな顔で見つめてきた。
「わかってる。私も大好きだよ。ありがとうね。」
苦しそうな体をそっと抱えて、寝かせた。それでもリリーは立ち上がり、父、母、そしてまた私に寄り添うことを繰り返した。
 

7/17/2023, 1:35:06 PM