少し手を伸ばしてみる。何もつかめない。
一歩踏み出してみる。どこも痛くない。
大声を出してみる。反響しない。
「ということは、ここは密室ではない」
辺りは暗くて何も見えないが、希望が見えた。
何しろオレは暗くて狭いところが苦手だからね。
「ところで今日は星がよく見えるね」
オレが言うと流暢な日本語でティモシーは言った。
「当たり前でしょ。ここは外で、見渡す限り森の3乗なんだから。頭良さげ風な地の文と声質やめろ」
「つまり言いたいことは?」
「お前は馬鹿」
――暗がりの中で
10/28/2024, 10:37:53 AM