月園キサ

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#柚原くんの一目惚れ (BL)

Side:Shu Yuzuhara



"柚原、また明日な"


最近、俺は放課後になると市ノ瀬からのこの言葉を楽しみにしているようなところがある。

それが何故かっていうと、市ノ瀬が明日も俺と一緒にいてくれるのか〜って思ったらそれだけでテンションが爆上がりするから。

でも今日はそれがない代わりに、市ノ瀬の家で一緒に課題をやることになった。


「市ノ瀬〜…俺もう疲れた!!」

「え〜、まだ20分しか経ってないじゃん」

「ちょっとだけゲームやっていい?ちょっとだけ!」

「あーあ、柚原が頑張って課題終わらせられたらちょっとしたご褒美あげようと思ってたのに〜」

「…へっ?ごほーびって何?」

「終わったら教える」

「えぇ〜!そんなのありかよ〜!」


ピアスバッチバチに開けてて髪にメッシュ入れてていつも黒いマスクしてるくせに、市ノ瀬は全然ヤンキーじゃないしむしろ俺よりずっと成績がいい。

俺は課題のプリントと戦っているフリをしながら、黒縁の眼鏡をかけて淡々と課題を片付けている市ノ瀬をチラッと見た。

…市ノ瀬がマスクの代わりに眼鏡かけてんのって、珍し〜…。


「…柚原ぁ、な〜に見てんの?」

「な、何にも見てねーし!」


思わずじっと見つめちまっていたようで、ふと顔を上げた市ノ瀬とバッチリ目が合ってしまった。

…くっそ〜…マジでこいつ、ムカつくほどの塩顔イケメン。

不自然に目を逸らしちまったが気にしない。
俺が見ているのは、課題のプリント。市ノ瀬じゃなくて、プリント!



──────────



「終わっだぁぁぁぁ…」

「お疲れ〜。頑張ったじゃん、えらいえらい」

「ほぼお前に教えられて、だけどな?」

「細かいことは気にしない気にしな〜い。そんじゃ、約束のご褒美ってことで」

「おぉ〜っ!ご褒美キターー!!」


市ノ瀬からの…ご褒美っ!!
俺にいったい何をくれるんだ!?

俺はカッと目を見開いて体をウズウズさせた。


「はい、じゃあまずは目を閉じてくださ〜い」

「へっ?お、おう!こうか?」

「そうそう、じゃあそのまま10秒キープ。10、9…」


俺の近くに市ノ瀬の気配を感じる。
市ノ瀬の両手が俺の肩に触れるのが分かる。
市ノ瀬の呼吸がほんの少し速くなったのを感じる。

…まさか、これって…!!


「3、2、1…」

「い、市ノ瀬…?」


市ノ瀬のカウントが0になった瞬間、突然俺の両耳が市ノ瀬の両手によって塞がれた。


「…も…ない」

「…!?」


市ノ瀬が何かを呟いたのがわずかに聴こえた後、あたたかいものが俺の左頬に触れてすぐ離れた。

多分…いや、間違いなくこれは…。


「…はい、ご褒美タイム終了〜」

「い、いいいい市ノ瀬ええええ…!!今…!今…き、キス…したのか!!?」

「ん〜…?何のことやら?」

「それとお前…何か言ってたよな?何て言ってたんだよ?」

「…まぁ、そのうち分かるんじゃない?」

「おいいい何だよそれ〜!!」


俺が頬に感じたのは、確かに市ノ瀬の吐息だった。
市ノ瀬は確かに俺にキスをした。

そしてよく見ると、市ノ瀬の耳が少し赤くなっているような…?
そうかそうか、普段あんなに何があっても余裕そうな市ノ瀬でもさすがに恥ずかしかったんだな!


「柚原」

「ん〜?」

「…また明日な」

「あ!そーやって強制的に会話終わらせようとしてるだろ!!」

「じゃなくて。ほら、時刻」

「うわやっべ、母ちゃんから鬼LINE来てる!早く帰んねーと!!」

「ん。だから…また明日な」

「お、おうっ!また明日な!!」


何だか、今日の市ノ瀬の "また明日な" はどこか少し寂しそうな感じがした。

…俺の気のせいか?




【お題:また明日】


◾︎今回のおはなしに出てきた人◾︎
・柚原 愁 (ゆずはら しゅう) (受けみたいな)攻め 高1
・市ノ瀬 瑠貴 (いちのせ るき) (攻めみたいな)受け 高1

(↑その日のお題で書けそうなキャラの組み合わせで書いてるせいで話が飛び飛びになりすぎてるので、過去作にも追記済みです)

5/22/2024, 1:57:31 PM