路地

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冬の透明な空気に、生温い土の臭いが混じり始めている。春など来なければいいのに、そうしたらこの異様な焦燥感も置いていかれる恐怖も無下に出来る。
桜が散っていくのが窓から見えた。ひとつ、またひとつ、数え切れないほど。春風が吹いたのだ。枝ひとつ落とせるほど吹けばいい。嵐になればいい。そうしたら早く春も終わる。そう思うと気が楽になる。
それでいい、今はそれだけで。


お題 それでいい

4/4/2023, 12:56:09 PM