子猫を拾った。否、拾ってきてしまった。
面倒な事に関わるのは、もう沢山だった。
道路の脇で、雨に打たれ弱々しく泣いている衰弱したそれを見つけた私は、
見て見ぬふりをして通り過ぎようとした。
故に、何故手を伸ばし、抱き上げたのか自分でも分からなかった。
びしょ濡れのそれは、意外にも暖かかった。
私を見て、私だけを見て、精一杯鳴き声を上げる。
弱々しくも、そこには確かに”強さ”があった。
その姿に、言いようの無い感情が込み上げた。
喜び、衝撃、憤怒、そのどれものようであり、或いはどれとも違うような気もした。
枯渇し、荒んだと思っていた己に、まだ良心や愛情と呼べるものがあったのだと、
その時ようやく気がついた。
「子猫」
11/16/2021, 7:42:50 AM