陶子

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【泣かないよ】

数年前、父が死んだ。
ガンが発覚してからきっかり一年で死んだ。
享年80歳。
まあ死ぬよね〜的な感じで、母も私も親戚も、特にこれといったリアクションは無かった。


クソ親父だった。
遊ぶ金欲しさに複数のサラ金業者から借金をし、返済せずにいたので家に取り立て屋が来たこともあった。
なぜか当時小学生の私が対応させらせた。怖かった。

毎月の給料日には外食に連れて行かれたが、それ以外で家計に金を入れたことはなく、すべてパチンコや趣味の買い物で消えていたので、私たち兄妹は母の稼ぎのみで生きていた。
死んでから母に聞かされたが、浮気三昧でもあったらしい。
そらあいくら金があっても足りまへんわなあ!!!

何度母に「頼むから離婚してくれ」と頼んだことか…
あのクソ親父なんて居ないほうが生活が楽になることは、小学生の私でもわかるレベルでヤバかった。
それでも別れずに最期まで連れ添った母の気持ちは未だにまったくわからないが、なぜか「陶子のために別れなかった」と言われ白目剥いた。私の必死の訴えは聞こえていなかったのか???


葬儀は、クソ親父本人の生前の希望通り直葬にした。クソ親父はなぜかわからないがお坊さんを極端に嫌っていた。
お経が無い分安く済むので、こちらとしてはどうでもよかった。
本当は病院からノンストップで焼却炉に放り込みたかったが、あいにく炉が混んでいた。
そのため一晩だけ葬儀場で遺体を安置することになり、それなら最期に一応顔を見ておきたいとクソ親父の妹一家が集まってくれた。
この人たちは大企業勤めのエリート揃いだ。クソ親父は大変外ヅラが良く、自分の所業をこの人たちには知られたくなかったらしいが、昔から母が逐一バラしており筒抜けだった。なので集まってもしんみりすることなく、笑いながらお互いの近況報告をして解散した。クソ親父の思い出話はほぼしなかった。


誰一人泣かなかった。
泣けと言われてもあの親父では泣けないよ。

3/17/2024, 1:47:57 PM