貴女の笑顔が咲く、そんな春が好きだった。
「凛〜」
緩やかに伸びた声が青空の中に響き渡る。
背中に小さな衝撃、そして彼女の体温。
寝坊した彼女が走って私に追いつくのもいつもの事。
幼稚園の頃からこうして二人で共に歩み、いつも二人で一緒に居た。
今日から高校生になる私達、未だ新しい制服、新しい鞄。穏やかな日差しはまるでこの日を祝福している様で。何より太陽の光を受けた彼女の笑顔がキラキラと輝いて見える。彼女は笑顔が良く似合う子で、私は彼女の笑っている姿が好きだった。
箸が落ちても笑う年頃とは良く言うけれど、笑っている彼女が好きなのだからいつまでも笑っていて欲しいと思う。
春風が髪を靡かせ、運ばれた春の香りと心地好さに思わず微笑みを浮かべた。
「凛、どうしたの?」
「なんでもない」
「あ〜わかった、好きな人でも出来たでしょ!凜にも春が!」
冗談めかして彼女が笑う。また笑顔が咲いた。
そんな彼女につられて私も笑みを零し、ニヤニヤと私の反応を楽しんでいる彼女の額にデコピンを入れた。
「好きな人なんて居ないわよ。」
好きな人なんて居なくても幸せなのだから。
好きな人より貴女の笑顔の方がきっと好きに決まってる。
好きな人の隣より貴女の隣の方が心地好い。
「痛いよ凛!何するの!!」
額を押さえてじとりと睨む彼女、今度は私がニヤリと笑う番。そしたら矢張りつられて彼女も笑みを浮かべてくれた。
貴女の笑顔、どうか今年も爛漫に咲きます様に。
お題:春爛漫
4/11/2024, 4:19:25 AM