「私の唯一の友達は本でした。」
そんな言葉から私の話は始まった。
私はよく図書室に籠っていた。
周りの目を気にしなくで済むからだ。
読書の時だけだ。
そう感じられるのは。
私は所謂「居ない子」扱いされていた。
大人しいからだけでは無い。
「自分にも問題があるのだろうか。」
と思った時もあった。
周りは私を居ない子扱いし、
親からも学校からも何処に居ても
居ない子扱いだった。
図書室に居たある雨の日だった。
私はいつもの様に
独りで本を読んでいたら
「いつも何の本を読んでいるの?」
私はいきなり声をかけられ
ビクッとした。
私はいつも図書室の端っこで
ぼんやりとしながら
本を読んでいたからだ。
急に声をかけられ
驚くのも無理はない。
「空想もの。所謂ファンタジー。」
私は思わず無愛想に答えてしまった。
人との会話に慣れていないからだ。
「ふーん。その本、面白そうじゃん。」
私が持っていた本は
主人公が彼方此方に赴き
最後には魔王を倒すという
オーソドックスな
ファンタジーものだ。
「いつもそのシリーズ読んでるの?」
「うん。」
「それ、一体何巻まであるの?」
「十二巻位じゃない?」
確かこの本はその位で終わったはずだ。
まだ途中までしか読んでいない為、
実際にはわからないから
多分その位だろう。
「私も読もうかなぁ。
その本のシリーズどこの棚にあるの?」
思いもよらない仲間ができた様だ。
私は心の中で
「やっと仲間が初めてできた。」
と心の中でガッツポーズをした。
それから毎日その子と
一緒に本を読む様になった。
毎日がこんなに楽しいと
思いもしなかった。
だけどそんな毎日は
そう続かなかった。
その子はある日遠くの街へ
転校する事になった。
私はまた独りになるのか。
別に構わないけど。
でも、本当はちょっと寂しい。
その子が引っ越す前の日だった。
私はいつも読んでいたシリーズの本の
最初の本を買ってその子の家に
遊びに行った。
最後のお別れの代わりに
思い出として
その本をあげる事にした。
その子は「大切にするね。」
と言ってそっと手を添えて
受け取ってくれた。
私は今もその思い出を
忘れはしない。
大切な友達だった人との
思い出だから。
また、いつか会えるといいな。
「読書の思い出と絆」
6/15/2024, 11:17:31 AM