両の手から水が溢れている。端正で中性的な顔立ちのあの方は今日も村人ために力を使う。
「しずくさま〜?いい加減休憩してくださいよ」
「ワタシは水神だぞ。休まずとも死なん」
そういう問題ではないといつになったら気づいてくれるのだろう。
「……でもさ、明らかに力減ってません?村人が増えたわけじゃないし、厄災も当分は来ないって司祭サマが言ってましたよ」
「……?村人は増えているだろう」
「え〜どうしちゃったんですか。村長から何も言われてませんけど」
神様にもやっぱり休息が必要なんだな。相変わらずどっから見ても綺麗だし。関係ないか。
今日のお勤めも終わり、家に帰る。途中に村長の家があるけどほとんど会話したことないな。お勤めも村長に無理やり騙されて始めた感じだし。楽しいからいいけどさ。ふと、村長の家に数人いることに気がついた。何か会話をしているのが聞こえた。
「……ええ。あれはあの部屋から出られませんので貴方がたを知ることはないでしょう。」
「だが、はじめよりも水が減っているみたいだな。これは、こちらに気づいているわけでは無いのか」
「そんなはずはありません。いくら神といえどそんな力は聞いたことがありませんから。それで、紹介する代わりにあれはご用意していただけるのですよね」
「ああ。約束通りだったらな」
これは、もしかして、やばいのでは?バレないように家の前を通り過ぎようとする。
パキッ
うん、終わった。
「だ、誰だ?!」
慌てて村長が飛び出してくる。咄嗟に通りがかったふりをしたためか、特に気にされることはなかった。あのときの緊張感は忘れられない。死ぬかと思った。
翌日、雫サマの元へ話しに行こうとした。だが、遅かった。首に趣味の悪い飾りを付けられ膝立ちさせられてる。俯いているためその表情は分からない。
「なに、してんだよアンタら!!雫サマから離れろ」
「残念だな坊主。昨日のうちに俺達を殺しておけばこんなことにはならなかったかもな。テメェに俺達が殺せるとは思えねぇけどな」
アハハハ。賊共が気味悪く笑う。怒りで震えがとまらない。長と思われる奴に殴りかかる。拳が届く前に手下にとめられるが蹴り上げ、殴り、頭突きをし、もがいてもがく。多勢に無勢だっけ。まあ、こんなのに勝てるわけないわな。顔を地面に押し付けられる。それも、雫サマが目にとまるように。
「無様だな。おい、神。テメェを助けようとした人間が死ぬぞ。テメェのせいで犠牲になるんたぜ。可哀想にな」
「そん、なわけないだろ。雫サマ、アンタなら逃げれんだろ。なあ、雫!」
「コイツは逃げられねえ。この装置はな、神すら従わせることができんだよ。」
「そんな、そんなの。おい、雫サマ、返事しろよ。なあってば!!」
あの方は、返事をしてくれない。ずっと俯いたままだ。
「じゃあな、坊主。恨むならこのクズ神を恨むことだな」
剣が首に当てられる。ああ、死ぬのか。ここで。
「相変わらず哀れだな」
一瞬、音が消えた。直後、賊が壁に飛ばされていった。何が起こったかはなんとなくわかった。あの方が、雫サマがやったんだ。
雫サマが長の元へ歩いていく
「人が神に勝てるわけなかろうが」
その後、村長と賊は王国へと連れて行かれた。どうなったかは知らない
相変わらずあの方は美しい。今日も水を両の手から溢れ出させている。今日もこれからもあなたの世話係になれるのがすげえ嬉しいです。雫サマ
4/22/2023, 9:59:39 AM