海月

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#81【喪失感】


大好きなバンドが解散すると知った日は
大好きな人に振られた時より辛かった。

解散理由もわからないまま
彼らはいなくなった。
ラストライブは天井席。
どれだけ叫んでも私の声なんて届かないと
わかる距離だったから
しっかり目に焼き付けなくちゃと思いながら
流れる涙を止めることもしなかった。
視界が滲まないように
シャッターを切るように瞬きをしていたと思う。

心にポッカリ穴があいた、なんて言葉じゃ
足りないくらいの喪失感。

何を糧に生きていけばいいの…?と
真剣に思っていたと思う。
若かったのだ。悲しくて痩せちゃうくらいには。

失恋には新しい恋。
推しの解散には新しい推し。

まぁ、私の喪失感なんて
所詮その程度のもの。
時間が経てば、他で埋められる。

多分、本当の悲しみと言うものを
有り難いことに私はまだ知らないのだ。

本当の喪失感を知ったとき
私は立っていられるのだろうか。

9/10/2023, 2:35:05 PM