水緒きざり

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私の名前は、珍しい。

お名前スタンプやキーホルダー、
占いの類には絶対出てこないからはなから探さない。

誰とも被らなくて、
みんなと同じになれなくて、
好きじゃなかった私の名前。

一発で漢字を読んでもらえた試しががなくて、
新年度の1日目は毎年憂鬱だった。

それでも、両親が一文字一文字意味を考えて
つけてくれた名前だったから、
嫌いにはなりきれなかった。

就職活動の面接で、名前について聞かれた。
集団面接で、私だけ。
面接官には、私の名前はいわゆる「キラキラネーム」
だと判定されたのだろう。
他の子が「志望動機」や「ガクチカ」を聞かれている
ときに、私は名前の由来を聞かれた。
聞いてきたときの、
「どうせ大したことない当て字なんだろ」
みたいな顔は今でも忘れられない。

私はそのときに、
自分の名前は唯一無二で大切で大好きなものなのだと
はっきり分かった。


一文字一文字の由来を答えているときの面接官の
興味のなさそうな顔は今でも忘れられない。

7/20/2024, 11:34:19 AM