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昔白いポメラニアンを飼っていた。
小学校から帰ってきた時に突然そこに居たのだ。
安直にシロという名前を付ける。

ペットショップで1万円に値下げされた状態で居て可哀想過ぎたからとの事だった。
血統書付きのポメラニアンだと言うのにデカい。
近所に白いスピッツを買っている所があって、その犬と良く間違えられた。

勿論値段の安さで同情した訳ではなく、昔母が小さい時に買っていたスピッツにとても似ていた事もあるそうだ。しかもその時もシロという名前だったそうな。
もうスピッツとしか見てないだろう……

当時は生き物の命の重さが分からず、段々散歩を億劫に感じてしまい、いつも母に任せ切りだった。

同時に近くに住んでいる祖母の家には柴犬らしきものが居た。
その犬も当時は今流行りの豆柴だと言われ、貰い受けたにもかかわらず、最早秋田犬との雑種だろうと断定されるほど大きくなった。食べさせすぎとかではなく、ちゃんと身のひきしまっている状態から確実に豆柴ではなさそうな犬だった。

大きすぎで祖母がこのまま行くと散歩で引きずられかねないと言うことから、叔母の家に預けられ、そして我らが白いポメラニアンが代わりに祖母の散歩相手になったのだ。

白い頭のおばあさんに白い犬。
散歩の途中で体力が無くなっておばあさんに抱き上げられながら帰る様は、他人が見たら笑えてくる姿だった。

そんなある日、シロは青梅を食べてしまい、そのまま体調を崩して亡くなってしまった。
あまりにも突然の別れだった。

もっと長く生きられただろうに、たった7年の生涯を閉じてしまったのだ。
祖母はもちろんしばらく悲しんだし、12年経った今でも私は言いようのない気持ちに襲われる。
他人の犬を見て可愛いと思っていいのだろうか、あの時散歩を億劫にして祖母に預けるような最低の行いをした自分は犬を愛でるような資格は無いのでは、と思えてしまう。

ただ、唯一の救いは祖母の夢にシロが出てきて、リスやら猫やら沢山の動物達と楽しそうに走っていく様を見たとの事だ。
有り得る。
母もそれを聞いて救われていた。

ただの想像でしかないが、引きずるとそのものの魂を縛り付けてしまいそうになるので、ここで書いて供養とする。




シロ、ごめんね。
たくさん学ばせてくれてありがとう。
また会った時には必ず幸せにするよ。
またね。

5/19/2023, 10:44:26 AM