宙ノ海月

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『大事にしたい』


深く息をつく。肩の重みが今日を憂鬱にする。

作り笑顔をして人と会話をするのにも疲れてしまった。

帰り道。
外はもう真っ暗で、そろそろ日付が変わろうとしていた。

今日も残業になってしまった...

そうだ、彼に連絡しなければ。

メールで今から帰るよー、とだけ送りスマホをしまう。

彼になんと言い訳しようか、そう考えていた時。

プルルルル、プルルルル

スマホの振動音が聞こえる。

カバンから出して画面を見ると、ちょうど考えていた彼からの電話だった。

「もしもし」

『...』

「...もしもし?」

彼からの返事がない。

『...おそい』

「え?」

『だから...おそい、って



...心配した』

だからこんな時間まで起きてくれていたのか。

彼の優しさに胸が暖かくなる。

「あはは、ごめんね。」

『笑い事じゃないよ!...もう』

「ふふふ。あ、もうすぐ着くよ。」

『ん。ご飯温めとくね。』

「はーい、ありがと〜。じゃあ切るね。」

『はーい』

そう行って通話を切る。

早く彼に会いたいな。

そう思いながら階段を駆け上がる。


カチャ

「ただいまー、!?」

「おかえりー!」

扉を開けると、彼は目の前にいた。

今は...目の、前?いや、違う。私は彼の胸の中にいる?

驚いて見上げると優しい目をして微笑む彼が、そこにいた。

「今日も、お疲れ様。」

「...うん。ありがと。」

抵抗もせずそのままでいると、彼は優しく髪を撫でてくれた。

私よりも大きな彼の手。

思い切り息を吸うと、彼の匂いに包まれる。

顔を彼の胸にうずめ、彼を充電する。

「んー...」

「あれ、今日は甘えたですか?」

「...ん」

「あはは、眠そうだなぁ...」

ほら、ご飯とお風呂だけやったら寝ていいから!

そう言って私の体を押す。

ああ、幸せだ。

この幸せを、ずっと、

...大事にしたい、なぁ。




僕の彼女は、頑張り屋さんだ。

いつも遅くに帰ってきては、力尽きるように眠りにつく。

いつもいつもそれを見る僕の身にもなって欲しい。

どれだけ僕が心配しているのかなんて、きっと彼女は知らないのだろう。

いつか無理をして壊れてしまうんじゃないかと、いつも気が気でならない。

まだ彼女よりも子どもな僕に、できることなんて少ないかもしれないけれど。

「僕が、君が思っているよりも君を大事に想っていること、わかって欲しいなぁ。」


暗闇の中、一つの光が2つの影を写し出す。


「今日は、月が綺麗ですね。」


✐­­¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯

あとがき

今日も今日とて長いですね...
書いてるだけでこちらが照れてしまうような甘ーい話をめざしました。
僕もいつか恋愛がしたいです。彼氏か彼女欲しい...
あと癒せるようにも目指しました。
こういう話好きなんですよね。
抱きついて癒されたい...
もはや吸い込むは気持ち悪いの域でしたかね?
まあ、ある程度満足するものがかけたので後悔はしていません。

この後も読書をお楽しみください。
では。

9/20/2023, 10:58:37 AM