【星空】
しんどかった。辛くて、逃げ出した。
必死に仕事をして、待ってたのは上司からのパワハラ。どんなに頑張っても手柄は上司のもの。少しでもミスをしようものなら罵詈雑言を浴びせられる。
初めて無断欠勤をした。
というより、逃げたくて、とりあえず遠くへと電車に乗って。気づいたら知らない街にいた。
どうしても帰りたくなくて、近くにあった宿に泊まった。そして薄い布団の中で久しぶりに泥のように眠った。
朝、目が覚めても体が動かなかった。布団の中でゴロゴロと過ごす。やっと体を起こせたのはお昼を過ぎた時間だった。外の空気でも吸おうかと、窓を開ける。目の前に広がるのは田んぼや畑。都会で育ったので、新鮮な景色だった。ビルはなく、周りの建物も1番高い建物は3階建ての家。近くにコンビニもなさそうだった。宿の前を通るのは、地元のお年寄りばかり。
なんか平和だな…
何をするわけでもなくゴロゴロと過ごし、気づいたら夜になっていた。気分転換に外を歩いてみる。空気が澄んでいて、とても気持ちが良かった。聞こえるのは蛙や虫の声のみ。
遠くに高校生ぐらいの男女が楽しそうに喋りながら歩いていた。2人が急に立ち止まり、空を見上げる。
つられて同じように空を見上げて見た。満天の星空だった。近くに高い建物がないからか、空がとても広く見えた。空を見上げるのなんて何年ぶりだろう。心が浄化されていくのを感じた。気がついたら涙が溢れていた。
どれくらい経っただろう。数分だったか、もしくは数時間だったか。時間を忘れて星空を見ていた。そして、決めた。明日、職場に行こう。辞表をだして、仕事を辞めて、自分のやりたかったことをやってみよう。だいぶ気持ちが軽くなり、宿へと向かった。
7/5/2023, 11:32:05 PM