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これまでずっと、自分の素を出せなかった。
まるで紫色の眼鏡を掛けているように。
昔々辛いことがあって、内面でひっそりと自責を繰り返していたから。

あれは私が悪いから仕方ない、私が悪いからみんなに顔向け出来ない。
そんな風に思っていた。

実は、もっともっと、深く陰惨な事実が隠れていて、恐怖からそれを直視できなかったから。
自分の素は、どんな感じなのだろう。

フラッシュバックを迎えながら、今でも思う。
押し潰される前の私は、どんな人間だったのだろう。
どうして、自分を恥ずかしいと思わなければいけなくなったのか。

家族なんて、糞食らえ。
常識なんて、糞食らえ。

そんなものは私を微塵も守りはしなかった。
一番大事なのはありのままでいることだと言うなら、それを邪魔する家族はどうなのだ。

みんなの守るものは、私には守れない。
みんなが愛するものは、私には愛せない。
みんなが共にあるものは、私とは共存できない。

そういうものから離れてやっと、私の素は開花するのだろう。
月下で咲く花のように。

多大な苦心で守り抜き、多大な労力を掛け、咲いたとしても暗がりで、ほんの一瞬。
きっとそれが私の全てなのだ。
神様に与えられた、私の全てなのだ。

7/13/2022, 6:21:16 AM