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ある日突然世界が逆さまに見えるようにらなった。天井が下に、床が上に。人々は僕の頭上の床を何くわぬ顔で歩いている。僕は天井を歩く。無論人々は落ちてきたりしない。僕は平衡感覚が狂ってしまって、出歩いても人とぶつかるばかりだったのでだんだん家に引きこもるようになっていった。しかし週一の買い物だけは避けられない。近所のスーパーまでゆっくり歩いていく。あの日僕は出会った。僕と同じように天井を歩く彼女に。見ず知らずの人だったが、咄嗟に引きとめてしまった。

「どうして、!どうしてあなたも天井を歩いているのですか!?」

彼女は一瞬驚いた後、まるで何かを懐かしむように微笑んで言った。

『あなたも、素直になりなさい。』

そうか、僕はずっと素直になれなかったから、いつも"逆さま"なことばかり言っていたから。これはきっとその罰なんだろうな。僕の心はいつまでも思春期のままだった。あぁ、世界が逆さまなんじゃない。僕が逆さまだったんだ。

次の朝、世界は元通りになっていた。

12/6/2024, 4:43:31 PM