汚水 藻野

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「おやすみ。」
わたしの隣でふにゃりと笑う貴方に嬉しさが溢れそうだった。

頭も撫でてくれたし、これほど嬉しいことはない、そう思った。
なのにね。

「早く逃げろ」
わたしを安心させるためか、あのときみたいにふにゃっと笑った貴方を、わたしは見ていた。
余裕そうだけど、余裕じゃない。今すぐここから逃げないと。

貴方と一緒に__。

「………!」

分かってる。

わたしはあの人とは違う。存在を恐れられていたわたしは誰とも関われなかった。

関わってくれたのは貴方が初めてだった。

頭を撫でてくれたのも。

一緒に笑ったのも。

わたしを笑わせてくれたことも。

あの人のことはもう遠い過去になってしまった。

わたしはそれを絶対に忘れないように、今日も。

でも、やっぱりね。

貴方が居ないから、独りで眠りにつくのは寂しいね。

返事をしてくれる人も、いないみたいだ。

_2023.11.2「眠りにつく前に」

大男と人ではない彼女は救われたか。

11/2/2023, 1:49:44 PM