狼星

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テーマ:君に会いたくて #68

能力を使った結果失敗に終わった計画。
人外の子の正体とは…? 

『お、気がついたか?』
気がつくと僕は横になっていた。シャドウが僕の顔を覗き込んでいた。
見慣れない景色が広がっている。ここはどこだ…。
『あ』
ドアが開いてそんな声が聞こえたから、思わずドアの方を向く。
『気がついたんだね』
その声は僕に近づいてくる。体を起き上がらせようとするが全く動かない。
『無理に動かないほうがいいと思うよ。結構な負担がまだ残っているだろうから』
そういったのはビルの屋上で会った人外。
『なぁ、こいつ誰だ? 知り合いか?』
そうシャドウは首を傾げる。知り合いというべきなのだろうか…。
「えっと…」
僕が戸惑っていると
『僕たちは同じ人外と人間のハーフなんだよ。人外くん』
『ゲ…。お前やっぱり、俺のこと見えてるのかよ』
『そうだよ? はっきり見えてる』
僕は二人の会話を聞いていて、違和感でしかなかった。不思議な空間にいる。そんなことを思っていると、
『君の名前は、真だよね』
「え、なぜ僕の名前を…」
『知っているよ。そりゃ…』
人外は、言った。
『だって僕たちは兄弟だもん』
「……は?」
僕の頭にはてなが浮かぶ。兄、弟…?
そんなはずはない僕には兄弟なんて…。
『まぁ、正確に言うと義兄弟なんだけどさ』
知らない。何を言っているんだコイツ。
でたらめ言って、僕たちを混乱させようとしているのか?
『なぁ、コイツおかしくね?』
シャドウもそう言った。
『おかしくない。証明だってあるんだよ』
そう言って取り出したのは、気を失う前に彼が持っていた日記帳だ。確か『閉ざされた日記』だったか…?
『これにはね、兄さんと僕のこと。それ以外にも色んなことが載っているんだ。いや、載っているというよりかはこれが僕の能力なんだけど』
そう言って、さっきはどんなに強く開いても開かなかった日記帳を軽々と開けた。
『兄さんと一緒にいるときだけこの能力は発動できる。つまり兄さんと僕の共同能力でこれは開くってわけ』
「でも屋上では開かなかったじゃないか」
『それは、兄さんの能力と僕の能力がつり合っていなかったから。兄さんが強大な力で能力使うのが悪いんだから!』
さっきから兄さん、兄さんと呼ばれているが本当に僕は兄さんなのか? 兄さんなんだとしたらなんでこの人外と一緒にいたはずの時間を消されている?
『ほらね、兄さんと僕は兄弟だ』
そう言って、見せられたのは確かに小学校の頃の僕と今、目の前にいる彼だった。腕を組んでいる僕たちは仲良さげに笑っていた。
『君に会いたくて、探していたんだよ。真兄さん』
僕はまだ頭がついていくことができなかった。

1/19/2023, 2:13:51 PM