🍀飛べない翼
左翼を失い右翼だけになってしまった。
落ちた左翼。
1枚の翼を手に取るとサラサラと崩れ無くなる。
機能をなくした左翼に片翼だけでは飛べない右翼。
意味が無い。
意味が無い天使。
意識しない間に右翼は白と黒の2色に染まり変わり
汚くなってしまった。
「その2色、綺麗だね。」
マントを着た誰かがそう言う。
「自分、汚いって思ってないよ。」
偏屈な態度で言い返す。
「はは、思ってなくてもね、顔に出てるよ。」
自分でも自覚していない「感情」に
誰かは気づいて気づかせてくる。
「……そうだね。汚いし、飛べなくなっちゃった。」
「……」
「……いっその事、右翼も切っちゃおうなか。」
「“も”?って何?左翼は自分で切っちゃったの?」
「どうなるかなって思って。でもどうもならなかった。死ねなかった。」
「死にたかったの?」
「うん。」
「なんで?」
「なんか疲れちゃった。何も考えたくなかった。」
「……」
「右翼切ったらどうなるかな。自分いなくなるかな。」
「ならないよ。」
誰かは強く言う。
「なんで言い切れるの?」
「……」
「なんで?」
もう一度問いかけると誰かは羽織っていたマントを脱いだ。
そこには、
翼が生えていなかった。
飛べない翼
飛べない天使
11/12/2022, 8:48:07 AM