イオリ

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眠りにつく前に

枕元に、セットしたスマホを置いて目を閉じる。

暗闇。何も無い暗闇。だがそれもほんの数秒で、スマホからは打楽器の音が響いてきた。

アゴゴベルの軽快なリズム。遠いジャングルの中で何かが始まる、そんなふうに思わせる音。

ティンパニが大地を震わせる。

フルートが加わる。風が吹いて地図を広げた。

ホルンの力強さ、バイオリンの繊細さがチェロの深みを際立たせる。

高らかにトランペットが鳴る。全ての楽器が一斉に覚醒し、壮大な冒険の幕開けを告げた。


まだ眠ることはできない。ワクワクしすぎて。眠ることができないってわかっているけど聞いてしまう。オーケストラバージョンの「宝島」。

もし、このワクワクを夢の中まで連れていけたら、どんなに素晴らしい夢を見れるだろうか。

──なんてことを考えたりもする。

冒険って具体的に何をするんだろう。海や山へ行ったりすることかな。それとも日常的に何かにチャレンジすることかな。

家族のことを考えると、どちらも気が引けるけど、心の中ではやっぱり何かを求めている自分がいる。


うん、よし。じゃあこうしよう。

「宝島」は、次は僕のお葬式で流そう。そしたら、やんちゃな冒険心を爆発させても、誰にも迷惑はかからない。

「宝島」を聞くのは、眠りについた後になっちゃうけど。

11/3/2024, 12:20:23 AM