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#2 ある日の夜。

いつもは心躍る時間だったけど、今日は雨が降っていた。
虫の声や夜空に光っているはずの星達も、ザーっと降る激しい雨にかき消されてしまった。
 
雫でおおわれたガラスの窓から、外を眺める。
ぼんやりとしか見えないけど、なんだか寂しそうな景色。

ずっと眺めていると、いつ間にか泣いていた。
自然と涙が流れていた。冷たい手で濡れた額をぬぐう。
なんでだろう、自分でそう思ったけれど、すぐにわかったような気がした。

"命"という、必死で燃えている炎が、"何か"をきっかけにこの激しい雨に一瞬で消えてしまう。ジュッとも言わずに。

そう思いながら、降っている雨を見ていると、なぜか涙が溢れて出してしまったのだ。
そして、空も一緒に泣いてくれているのかな、なんて。

その時がいつ起こるなんて誰にも分からない。
だからこそ、幸せや楽しみを見つけて笑っていられるのだ。

ふぅーっと、息を吐くと、目の前のガラスの窓が曇った。
曇らせるつもりなんてなかったのに、とクスッと笑った。
こんな何気ないことでも心が温まるのだ。
やっぱり、笑わなくっちゃ。

今日も、そんなふうに一日が終わった。


___涙の理由

10/10/2022, 11:59:14 AM