No identity

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 よく晴れた昼下がり、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあちゃんは川に洗濯に行きました。おばあさんが洗濯をしていると川の上流から桃がどんぶらこ~どんぶらこと流れてきました。驚いたおばあさんはそれを家に持ち帰り、おじいさんと一緒に割ると、中から元気な男の子が出てきました。二人はたいそう驚き、嬉しみ、そして名を付けました。
 その名をー桃太郎ー

 15になった桃太郎は人に悪さを働くとされる鬼を退治しに鬼ヶ島に行く事になりました。刀と桃団子をこしらえて育ての親に別れを告げました。
道中で桃太郎と桃団子に惹かれた犬猿キジを仲間に迎え、つひに鬼の住む鬼ヶ島に辿り着きます。
そこで見たのはなんら人間と変わりの無い生活を送る
鬼たち。自分が今から行うことが果たして正しいのか分からなくなった桃太郎ですが、仲間に背中を押され、村の人々の言葉を胸に鬼と相対します。
鬼たちとの闘いは長く、激しいものでした。
朝の霧が晴れ、夜の雨が降り終わったとき、桃太郎は
最後の鬼の身体の上で刀を突き立てていました。
「すべて、終わった。」
その時桃太郎の胸中にあったのは喜びや達成感だけでなく、それらを覆い尽くすような"なにか"でした。
ただ自分の目から流れる涙を拭いながら上を見ると
そこには溢れんばかりの星々ー。

 その行いは、村人から見れば確かに正義であり正しい事だったでしょうが、では鬼たちからすれば、、?
そんな疑問とわだかまりを胸の中に持ちながら
今日も桃太郎は刀を振るう_。

3/15/2024, 12:36:50 PM