火が灯ったキャンドルを持って、館の中を歩く。灯のない館でキャンドル一つなどなんと頼りの無いことか。窓の外の月明かりの方が廊下を照らしてくれている。それでも、このキャンドルを取り上げられたらと思うと迂闊に手放せない。そっと廊下の先を見ようと手を伸ばす。誰もいない。いないはずが、誰かが囁いている。その火を寄越せと。囁いているのだ。
11/19/2023, 2:24:54 PM