「私、雨女なんだ。」
彼女は、もう半分になったクリームソーダをストローで掻き回しながらそう言った。よくあるファミレスの大きなガラス窓から止む気配のない雨が降り続けているのが見える。
ここ2週間はほぼずっと雨だ。
「雨女って?」
「雨を降らせる女の子のことよ」
「そうじゃなくてなんで雨女?」
「気づかない?私達が会う時いつも雨なの」
言われてみればそうだ。僕達が初めて会った日も雨だった。それから、僕らが会う日はずっと雨で、それが覆ることは今までになかった。だから、僕らはいつもこうして屋外に押し込められてしまう。
「僕今まで気づかなかったや、そっか君は雨女だったのか。 小さい頃からずっと雨女なの?遠足の日とか」
「小さい時は違ったわ」
「へえじゃいつから?」
「ちょうど2週間前から」
彼女はにやにやしながらまだストローを回している。耳に掛けた髪はさらさらと落ちていっている。
「2週間前って、随分と最近だねというかちょうど1か月前って僕達が出会った日じゃないか」
「そうよ?」
「そうよって、でもなんでちょうど2ヶ月前に急に雨女になるんだよ」
「なんでだろうね」
「なんでだろうねって、あ、ちょっとまってよ」
僕は初めて会った日に彼女とした話をふと思い出した。
彼女はやっと手を止めて耳から落ちた髪の毛を耳にかけなおしている。顔は僕の方を見て頬を赤らめて笑っている。
「その日って梅雨入りした日じゃん」
「ご名答」
彼女はいたずらぽく笑う。つられて僕も笑ってしまう。
「それはずるいよ。騙された」
「ごめんごめんだって信じると思わなかったんだもん」
耳にかけた髪はまた落ちている。
「それっぽくいうから」
「でも本当に雨女だったら?」
「そしたら僕が晴れ男になるよ」
「雨女と晴れ男?どんな天気になるんだろう」
「それは晴れでしょ」
「えぇなんで私が負けるのよ」
「晴れのパワーの方が強いのだ」
「じゃ、それならさもし明日晴れたら晴れ男の方が強いってことでいいよ」
「おおいいよその勝負、うけてたつよ」
_明日、もし晴れたら
8/2/2024, 5:23:30 AM