【お題】秋🍁
秋は彼の季節だ。
名前に“秋”という字が入る彼の。
秋は真夏の茹だるような暑さがなく真冬ほどの寒さもないので過ごしやすくて良い季節だと僕は思う。
それに秋は【読書の秋】【芸術の秋】【スポーツの秋】などと言われるように何かを始めるにはうってつけの季節だ。
【食欲の秋】なんていうものもあるけれど。
そして夜になれば秋の虫たちの鈴を転がしたような澄んだ清らかな声が聴こえる。
「ねえ、君はどうして僕が好きなの?」
貴方はそう僕に問いかける。高すぎずけれども低すぎない澄んだ声で。
「こんな……地味で、目立たなくて、ひねくれもので何も無い僕なんか……っ?!」
僕は思わず彼を抱きしめていた。
「貴方は素敵な人です」
この人はどうして自分をそんなに卑下するのだろうか。こんなに魅力的なのに。
「僕は貴方より優しくて温かくて美しい人を知りません」
抱きしめた彼の熱が心地良い。
「僕は別に優しくなんて……」
こんなに言っても彼は自分を否定する言葉を吐く。
「優しいですよ。しかも誰にでも分け隔てなく」
僕がその相手に嫉妬するくらいに。
それでも彼は自分を卑下する言葉を続ける。
「っ……そ、それに美しいなんて言葉。僕には一等似合わない形容詞だよ」
「僕の大切な貴方を貶す言葉はたとえ貴方でも許せません。ましてや他の誰かの言葉なら尚更。」少しだけ声を低くしてそう囁いた。
許せないし許さない。愛しい彼を貶す言葉を吐くのは誰だろうと。
少しだけ彼を抱きしめる力を強める。
「わかりました。これから貴方がどれだけ美しくて魅力的で僕を誘うか教えてあげます。秋の夜はまだまだ長いので覚悟してくださいね」
【続きます!】
9/26/2022, 6:29:10 PM