狼星

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テーマ:冬は一緒に #36

※この物語は#20からの続編です

ずっと一人だった冬。
今年の冬は隣にラクラがいてくれる。
「ミデル、今年も綺麗だね」
昨年と同じようにイルミネーションが見たいと言ったら連れてきてくれたラクラは私にそう言った。
私はラクラの秘密を知った。王国の王子であることは前々からなんとなく知っていた。というか、知らない人はいないだろう。
ラクラはなんで私と一緒にいてくれるんだろう。
国の王子なのに、魔法使いとして嫌われている私といるのはなぜなんだろう。最初の頃はもちろんラクラのことを半信半疑だった。
でも、最近のラクラとは自然に打ち解けている自分がいた。ラクラの秘密を知った私は、その後思った。
私も打ち明けていいかな、と。
私にも秘密がある。それは酷く、思い出すだけでも苦しくなる私の過去だ。重い話にはなる。ラクラはそうだとしても聞いてくれるだろうか。
ラクラは本当の私を知ってしまったら、私を嫌うのではないか。
そして、また一人になってしまうのではないか。
怖くなった。
「ねぇ、ラクラ」
私が話しかけるとラクラは私の方を向いた。
「今年の冬は一緒にいてくれる?」
ラクラはじぃっと私を見た。
「だめ」
ラクラはそう言った。私は俯いた。そうだよね、打ち明けたのはラクラが王子、ラックとして戻りたいからだよね…。
「『冬は』じゃない。これから、ずっと」
「へ?」
思いがけないラクラの言葉に気の抜けた返事が出る。
これから、ずっと…? 一緒にいていいの? 一緒にいてくれるの?
私はラクラを見ていた。本当に?
私を捨ててきた人はたくさんいた。
いいように使われる。私を魔法使いだと差別する人もいる。そんなわたしでも、一緒にいてくれるの?
怖くて聞けなかった。でも、それを察したかのようにラクラは、言った。
「一緒にいたい。僕はミデルと一緒にいたいから。
 冬だけじゃない、これからも」

12/18/2022, 2:36:33 PM