雨に打たれてびしょ濡れのまま玄関に入るなり、彼女は駆け寄ってきてくれた。心配そうな面持ちでオレの髪や顔を拭いてくれる彼女に、心底ほっとした。
こんなオレを見捨てないでいてくれる。毎日のように向けられる慈悲の笑みは、まるで柔らかな雨のよう。
こんなダメになっちまったオレを愛してくれてありがとう。オレが泥まみれになる度に、微笑んで抱きしめてくれてありがとう。
おまえがオレに見向きもしてくれなくなるまでは死なないよ。おまえがオレに呆れるまでは、優しい雨を降らしてね。
「柔らかい雨」
11/6/2021, 1:21:55 PM