強い人

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少し前に、野良猫と仲良くなったことがある。
夜に公園を散歩していたら、茂みからニャーニャー聞こえて、近くに行ってみると細身のキジトラのネコがこちらをじっと見つめていた。
逃げる素振りはなかった。だから、怖がらせないように静かにしゃがんで、そっとからだを撫でてみた。猫は立ち上がって、私の足にからだをこすりつけてくれた。
正直運命だと思った。
こんなに懐く野良猫なんてそうそういない。
家で一緒に暮らしたいと思ったけど、家族が反対するのでできなかった。
だから、毎日その猫に会いに行った。
私がベンチに座ると、その子は膝の上に乗って寝てくれるようになった。こんな漫画みたいな展開あるんだって感動した。温もりを感じて、幸せだった。
ある日、猫が急に立ち上がって歩いていくので、私は不思議に思って後をついて行った。しばらくすると、一人お婆さんがやってきて、その途端猫が激しく鳴き始めた。私には見向きもせずに、お婆さんの元へ駆け寄っていった。
私は酷く傷ついて、そのまま家に帰った。
私は独りだったのに、あの子は独りじゃなかった。
私にとってあの子は特別なのに、あの子にとって私はそうじゃなかった。
私はまるで失恋したような気分になった。
私って、都合のいい女だったんだ、、。
でも気がついた。猫はもともとそういう生き物だった。マイペースで、どこまでも自分勝手。そこがチャームポイント。
だから私は、構わず次の日もその子に会いに行った。
最後に会ったのは、いつかの早朝。いつも暗い時間に会っていたから、新鮮だった。なんか気まずかった。あの子もそう思っていたかも。
私がいなくてもあの子は大丈夫なんだと思うと、次第にもう会いに行こうと思わなくなった。
私は、私だけを必要としてくれる存在が欲しかったんだと思う。結局一番自分勝手なのは私だった。
それにしても、あの猫は小悪魔な子だったな。まんまとトリコになっちゃったよ。今も元気にしてるといいな。


6/26/2024, 11:24:10 AM