015【空模様】2002.08.19
雲や風が空に描く模様が、気象。
星々が夜空に描く模様が、天文。
むかしから、僕らの国では、これらの模様を観測して、天下の情勢や世の行く末を占ってきた。
空模様には、地上世界の有様が如実に反映される、という。では、昨今の、世界的に疫病が流行ったり、それに乗じるかのように理不尽な戦争が起こされたりするような情勢を、もしほんとに空が、具体的な模様として映し出せるのなら、例えば、どんな模様になるのだろう。
果てし無く淀み続ける黒いどろどろだったりするのか、絶え間無く捻くれ続ける紅蓮のうずまきだったりするのか。
それとも、剥き出しの汚い歯の高笑いだったりするのか。
今日の空模様も曇りだったけど、すくなくとも、そんな奇天烈な模様が映されそうな気配は微塵も無かった。
それはつまり。天はまだ、人間を見捨てていないということだろうか。もう、随分と、世の中がめちゃくちゃになってきてるような気がしているのに。
でも、取り敢えずは。そう解釈しておくことにした。
だから、空模様観測台の観測官たる僕は、今日も。観天望気日誌に、記録する。
「空模様に異常無し」と。
8/19/2022, 12:49:25 PM